日本のリビングスタイルは、時代とともに劇的に変化してきました。その変化をたどることで、現代の家族の在り方が見えてきます。
本コラムでは、日本のリビングの進化を振り返り、これからの住まいについて考えます。
ちゃぶ台を囲む和の団らん(1920~1950年代)
この時代のリビングは、畳敷きの和室が主流でした。座布団と座卓を囲み、家族が食事を共にする「ちゃぶ台文化」が定着していました。
冬にはこたつが活躍し、暖を求めて自然と家族が集まる場に。まだテレビも普及しておらず、家族の会話が最大の娯楽だった時代です。
テレビが中心の「LDK」誕生(1960~1980年代)
高度経済成長期とともに、団地やマンションが増加し、「LDK」という間取りが一般化しました。
応接セットと呼ばれるソファとテーブルがリビングの象徴となり、団らんの中心は和室から洋室へ。
テレビの爆発的普及により、家族はテレビの前に集まるようになり、「みんなで同じものを見る文化」が根付いていきました。
広く快適なリビングの時代(1990~2010年代)
バブル期以降、リビングはさらに進化。「広いLDK」が主流となり、リビングとキッチンの一体化が進みました。
システムキッチンや対面式キッチンが登場し、料理をしながら家族とコミュニケーションが取れるスタイルに。
また、リビングで勉強する「リビング学習」が注目され、子ども専用の学習スペースをリビングに設ける家庭が増加しました。
多様化するリビング – 「集う場」から「個を尊重する空間」へ(2020年代~)
テレワークの普及により、リビングにワークスペースを設ける家庭が増加。
「家族が集まる場」から「それぞれが落ち着ける場」へとリビングの役割が変化しています。
また、スマホやタブレットの普及により、リビングで家族が一緒にテレビを見る機会は減少。
一つの場所に集まりながらも、それぞれが自分の好きなコンテンツを楽しむスタイルが一般化しています。
これからのリビングとは?
時代ごとに「家族が集まる理由」がありました。
ある時代は暖を求め、ある時代はテレビを見るために。
しかし、現代では「家族=常に集まるべきもの」という固定観念は薄れつつあります。
今求められているのは、一人ひとりが快適に過ごせる空間。
リトリート(心を休める)できる空間が、これからの住まいにおいて重要視されるでしょう。
ただ、そんな時代だからこそ、食事の時間など「共有する時間」も大切にしていきたいものですね。